2024年3月7日

【東京会議2024で何を議論する?】民主主義国自身の問題を問い、新しい国際秩序の構築に動き出す

3月13日から15日にかけて開催する「東京会議2024」に向けて、準備はいよいよ大詰めを迎えています。

本日の記事では、14日の公開フォーラムで行われる2つのセッションについて、テーマの背景にある問題意識とそれらの議論の目的を掘り下げます。

1. 二つの戦争をどのように終結に向かわせることができるのか?

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてからすでに2年が経過していますが、その終結の糸口は見えていません。さらに、イスラエル軍による攻撃が続くガザ地区ではこれまでの死者が3万人を超え、多くの民間人の命が犠牲になっています。

世界はこの残虐な戦争を止められずにいるのです。

そんな中、言論NPOが実施した有識者へのアンケート調査では、ウクライナとガザ戦争に対して、非常に厳しい見方を示していることが明らかになりました。

▼ウクライナ戦争については「膠着状況が続き、勝利者はいない」と考える人が半数を超え、「今が停戦に向けた努力を始める局面」との回答が6割を超えています。

▼さらに、イスラエルのガザ攻撃を国際法違反だと考えている有識者は74.6%と7割を超えています。

では、この二つの戦争をどのように終結に向かわせることができるのでしょうか?

「終結」させるためには、停戦への努力停戦後の地域の安全を保障するものがなくてはなりません。

ですが、そのような長期的な目標への取り組みは十分でなく、世界では目の前の紛争管理や人道支援を行うのが精一杯の状況にあります。

そんな中でも、国際社会は紛争解決や平和構築というゴールに向けて今、努力を始めなくてはいけないと考えています。

実際に日本の有識者の約6割が、たとえ難しい局面であっても“平和構築のための努力していくことは必要”との考えを示しています。

東京会議2024では、この世界の平和に向けた道筋を真正面から議論します。

公開フォーラムのセッション1では、「ガザとウクライナ戦争の終結と平和構築に挑む」と題して、二つの地域での平和秩序をどう構築するのか、国際社会はそのためにどのような努力をしなければならないのか、世界を代表する10ヵ国のシンクタンク代表者とともに議論します。

2. 民主主義国自身の問題を問い、新しい国際秩序の構築に動き出す

セッション2のテーマは「世界の民主主義国に今、何が問われているのか」ですが、なぜ今、民主主義国が自身の課題に目を向ける必要があるのでしょうか?

欧米とグローバルサウスの溝の深まり

第一に、戦争や気候変動などの大きなグローバルリスクに直面している中で、西側の民主主義国がこれらの問題解決に対する取り組みを怠っていることへの不満が、グローバルサウスの国々で高まっています。

実際にウクライナ戦争では、ロシアを非難し軍の即時撤退などを求める決議案には141カ国が賛成したものの、西側の主導する経済制裁に加わったのはその3分の1ほどでした。

戦争の影響でエネルギー危機や食糧危機がさらに深刻になった脆弱国に対し、欧米は経済制裁に加わるよう説得できるほどの「答え」を示せていなかったと言論NPO代表の工藤は話します。

欧米諸国は結束しましたが、欧米の示す「正義」に世界全体が結束したわけではありませんでした。

また、ロシアのウクライナ侵攻を厳しく非難する一方で、ガザ攻撃を続けるイスラエルに対しては擁護する米欧の姿勢に対して「ダブルスタンダードじゃないか」といった批判が噴出しました。欧米とグローバルサウスの隔たりがより顕著になっています。

上智大学グローバル教育センター教授の東大作氏は、2月27日の言論フォーラムにて、グローバルサウスの国々の「今までとは違う根源的な怒りや不満」が高まっていると指摘。

東氏は、西側が「相当な覚悟を持って向き合い、解決していかないと、世界の対立がどんどん激しくなってしまう」との懸念を示し、先進民主主義国による紛争解決や平和秩序の構築に向けたより一層の努力の必要性を強調しました。

▼先の有識者アンケートでも、民主主義国は「世界の平和秩序の修復に向けた努力」を行い、「ダブルスタンダードではなく、法の支配を貫徹」すべきだとの声が多数を占めています。

欧米が主導してきた自由でルールに基づいた国際秩序は壊れ始め、世界の対立と不確実性が増しています。そんな中、西側は世界からの不満に向き合い、覚悟を持って努力を始めなくてはいけない局面にあります。

民主主義の後退

さらに、民主主義国は、国内の民主統治への不満・不信という課題も背負っています。

▼この秋の米大統領選について、トランプ氏の再選可能性が50%以上はあると見ている有識者は9割を超え、「民主主義の世界的な後退が加速すること」を懸念する人が半数を超えています。

社会の分断化が進み民主統治の後退が指摘される中、民主主義自体が国際政治や市民社会での信頼を高めなくてはいけません。

このように、民主主義国の立ち位置が今、強く問われているのです。

だからこそ東京会議2024では、我々民主主義国自身の問題を真正面から議論します。

公開フォーラムの第二セッションでは、民主主義国が多国間協力と法の支配による新しい世界の秩序をどう構築していくべきなのか、民間から問題を提起し、世界へメッセージを打ち出します。

国間協力に向け、最前線で議論

「東京会議」は単なるイベントではなく、世界課題への多国間協力に向け、まさに最前線で議論する舞台です。

今回の会議では20ヵ国、10の国際機関から38名のハイレベルなパネリストが集結し議論します。

最終的には、日本政府及び今年のG7議長国であるイタリア政府への提言をまとめ、この日本から世界へ強いメッセージを発信します。

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