2024年1月5日

第19回東京-北京フォーラム閉幕:代表工藤の想い

「東京-北京フォーラム」で政府間外交の環境をつくる

私は民間の対話には特別な使命があると考えています。両国関係が困難な時、共通の課題を抱えた時、両政府よりも一歩先に出てその課題に立ち向かい、政府間外交の環境づくりを行うことです。

19 回目を迎える今年の「東京-北京フォーラム」で、私たちが一歩先に出て取り組もうとしたのは二つのことです。

第一に、国際社会の平和に対する努力が厳しく問われる局面で、本当に日中両国が力を合わせて世界の平和のために取り組むことができるのか、ということです。全体テーマに「平和」を設定したのはそのためであり、私たちは平和に向けた努力を政府に先駆けて合意しようと考えたのです。
特に今年は日中平和友好条約の 45 周年であり、両国が世界の平和や繁栄に責任を持って取り組むことは、この節目の年に私たちに突き付けられた重大な課題だからです。

そして、第二に両国の外交と国民間の対話を正常化するということです。今年のフォーラムは4年ぶりに対面での開催となりましたが、反スパイ法の改正で訪中の安心が確保できないと少なくないパネリストが、北京に向かうことを断念しました。また、11 月の APECでは、日中の首脳会談は実現しましたが、まだこの時は政府間の対話は軌道に乗らず、それがどう転ぶか分からない状況でした。 私たちは、今回の議論で対話の環境づくりに本気で取り組もうと考えたのです。

両国間で「北京コンセンサス」に合意し閉幕

北京ではその前日まで中国政府の第三回「一帯一路」の国際会議が行われ、習近平国家主席とロシアのプーチン大統領との首脳会談も行われました。 私たちの対話は、その会議に挑むように、その翌日からまさに平和と核の問題をめぐって公開の議論を行ったのです。この議論には日中両国の約百名もの有識者、有力者が参加しました。追い風になったのは、岸田首相の会議前の晩餐会にあてた祝辞でした。岸田首相はその中で、この地域の平和と繁栄に責任を持つ中国との対話は極めて大事だとし、努力を呼びかけ たのです。

政治外交や、核の問題、経済など7つの分科会の議論はそう簡単なものではなく、激しい 議論もありました。しかし、私たちは真剣に現状の困難に向き合い、そして、協議は徹夜に なりましたが、平和とあらゆる対話の再開に向けた「北京コンセンサス」を合意したのです。

こうした民間の努力が、この地域と世界の平和を願う、多くの人の希望に少しでも貢献でできることを信じています。

言論 NPO 代表 工藤泰志