2024.09.26
9月3日から2日間にわたり、日米中韓4カ国の外交・安全保障の専門家15氏が参加して行った「アジア平和会議」が開催されました。
今回の会議では、朝鮮半島では核開発を進め、周辺に挑発を繰り返す北朝鮮とウクライナで国際法違反の侵略を行うロシアが軍事協定を結び、この北東アジアやその周辺でも、中国と米国を中心とした同盟国との間で、軍事拡大と対立が恒常化している中、今回の会議では全体テーマを「平和への覚悟」とし議論が行われました。
そして、2日間の議論を踏まえた議長声明では、「力による抑止は手段にはなりえても唯一の手段になり得ず、それだけでは現状維持を超えて双方の軍事拡大と対立を止めることはできない」ということ、「紛争のリスクを管理し、共通の課題で力を合わせる努力」が必要との認識で一致。
その上で、この地域における信頼醸成の仕組みの土台作りに貢献するために「アジア平和会議」と日米中韓4カ国の専門家に問われた役割であり、今後も努力を重ねて、責任を果たしていくことが「平和への覚悟」だと結んだ議長声明を採択し、閉幕しました。
2024.03.25
言論NPO代表 工藤泰志の民間外交に密着したドキュメンタリー映像「平和と核 本音の対話」が完成しました。舞台は昨年北京で開催された「第19回東京ー北京フォーラム」。10月19日から2日間にわたって行われた本フォーラムでは、「平和」を全体テーマに据え、政治・外交、安全保障、核問題、経済、デジタル、メディア、青年の7つの分科会で有識者約100氏が議論を行いました。
中でも注目を呼んだのが、昨年初めて行った特別対話「核分科会」です。本フォーラムとあわせて実施した日中共同世論調査では、中国人は半数超、日本人も4割弱が核戦争が「あり得る」と考えていました。背景にはウクライナに侵攻するロシアのプーチン大統領による核の恫喝や、核保有国が使いやすい核兵器の小型化を進めていることがあります。
中国では核分野は秘密かつ重要な部門であり、日中で核について議論することなどめったにありませんが、こうした危機的状況を受けて、本フォーラムでは特別対話として核の分科会を開催し、アジアにおける核不拡散に向けた日中合意形成に挑んだのです。
ドキュメンタリーでは、アジアと世界の平和に向け、民間から核不拡散に挑んだ工藤の挑戦に迫っています。是非ご覧ください。
\工藤はSNSでも発信しています/
フォローして日々の発言をお見逃しなく!
▼X
▼TikTok
@peace_kudoyasushi
https://www.instagram.com/genron_kudo.yasushi/
https://www.facebook.com/kudo.yasushi
2024.03.7
3月13日から15日にかけて開催する「東京会議2024」に向けて、準備はいよいよ大詰めを迎えています。
本日の記事では、14日の公開フォーラムで行われる2つのセッションについて、テーマの背景にある問題意識とそれらの議論の目的を掘り下げます。
1. 二つの戦争をどのように終結に向かわせることができるのか?
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてからすでに2年が経過していますが、その終結の糸口は見えていません。さらに、イスラエル軍による攻撃が続くガザ地区ではこれまでの死者が3万人を超え、多くの民間人の命が犠牲になっています。
世界はこの残虐な戦争を止められずにいるのです。
そんな中、言論NPOが実施した有識者へのアンケート調査では、ウクライナとガザ戦争に対して、非常に厳しい見方を示していることが明らかになりました。
▼ウクライナ戦争については「膠着状況が続き、勝利者はいない」と考える人が半数を超え、「今が停戦に向けた努力を始める局面」との回答が6割を超えています。
▼さらに、イスラエルのガザ攻撃を国際法違反だと考えている有識者は74.6%と7割を超えています。
では、この二つの戦争をどのように終結に向かわせることができるのでしょうか?
「終結」させるためには、停戦への努力と停戦後の地域の安全を保障するものがなくてはなりません。
ですが、そのような長期的な目標への取り組みは十分でなく、世界では目の前の紛争管理や人道支援を行うのが精一杯の状況にあります。
そんな中でも、国際社会は紛争解決や平和構築というゴールに向けて今、努力を始めなくてはいけないと考えています。
実際に日本の有識者の約6割が、たとえ難しい局面であっても“平和構築のための努力していくことは必要”との考えを示しています。
東京会議2024では、この世界の平和に向けた道筋を真正面から議論します。
公開フォーラムのセッション1では、「ガザとウクライナ戦争の終結と平和構築に挑む」と題して、二つの地域での平和秩序をどう構築するのか、国際社会はそのためにどのような努力をしなければならないのか、世界を代表する10ヵ国のシンクタンク代表者とともに議論します。
2. 民主主義国自身の問題を問い、新しい国際秩序の構築に動き出す
セッション2のテーマは「世界の民主主義国に今、何が問われているのか」ですが、なぜ今、民主主義国が自身の課題に目を向ける必要があるのでしょうか?
欧米とグローバルサウスの溝の深まり
第一に、戦争や気候変動などの大きなグローバルリスクに直面している中で、西側の民主主義国がこれらの問題解決に対する取り組みを怠っていることへの不満が、グローバルサウスの国々で高まっています。
実際にウクライナ戦争では、ロシアを非難し軍の即時撤退などを求める決議案には141カ国が賛成したものの、西側の主導する経済制裁に加わったのはその3分の1ほどでした。
戦争の影響でエネルギー危機や食糧危機がさらに深刻になった脆弱国に対し、欧米は経済制裁に加わるよう説得できるほどの「答え」を示せていなかったと言論NPO代表の工藤は話します。
欧米諸国は結束しましたが、欧米の示す「正義」に世界全体が結束したわけではありませんでした。
また、ロシアのウクライナ侵攻を厳しく非難する一方で、ガザ攻撃を続けるイスラエルに対しては擁護する米欧の姿勢に対して「ダブルスタンダードじゃないか」といった批判が噴出しました。欧米とグローバルサウスの隔たりがより顕著になっています。
上智大学グローバル教育センター教授の東大作氏は、2月27日の言論フォーラムにて、グローバルサウスの国々の「今までとは違う根源的な怒りや不満」が高まっていると指摘。
東氏は、西側が「相当な覚悟を持って向き合い、解決していかないと、世界の対立がどんどん激しくなってしまう」との懸念を示し、先進民主主義国による紛争解決や平和秩序の構築に向けたより一層の努力の必要性を強調しました。
▼先の有識者アンケートでも、民主主義国は「世界の平和秩序の修復に向けた努力」を行い、「ダブルスタンダードではなく、法の支配を貫徹」すべきだとの声が多数を占めています。
欧米が主導してきた自由でルールに基づいた国際秩序は壊れ始め、世界の対立と不確実性が増しています。そんな中、西側は世界からの不満に向き合い、覚悟を持って努力を始めなくてはいけない局面にあります。
民主主義の後退
さらに、民主主義国は、国内の民主統治への不満・不信という課題も背負っています。
▼この秋の米大統領選について、トランプ氏の再選可能性が50%以上はあると見ている有識者は9割を超え、「民主主義の世界的な後退が加速すること」を懸念する人が半数を超えています。
社会の分断化が進み民主統治の後退が指摘される中、民主主義自体が国際政治や市民社会での信頼を高めなくてはいけません。
このように、民主主義国の立ち位置が今、強く問われているのです。
だからこそ東京会議2024では、我々民主主義国自身の問題を真正面から議論します。
公開フォーラムの第二セッションでは、民主主義国が多国間協力と法の支配による新しい世界の秩序をどう構築していくべきなのか、民間から問題を提起し、世界へメッセージを打ち出します。
国間協力に向け、最前線で議論
「東京会議」は単なるイベントではなく、世界課題への多国間協力に向け、まさに最前線で議論する舞台です。
今回の会議では20ヵ国、10の国際機関から38名のハイレベルなパネリストが集結し議論します。
最終的には、日本政府及び今年のG7議長国であるイタリア政府への提言をまとめ、この日本から世界へ強いメッセージを発信します。
▼東京会議2024の詳細はこちら
2024.02.9
世界の危機に最前線で挑むハイレベルなスピーカー約30名が東京に集結
東京会議2024 には、外交問題評議会、チャタムハウスなど世界を代表する10カ国のシンクタンクのトップが勢揃いする他、国家首脳級のスピーカーやIMF、WTO、UNDP、AU(アフリカ連合)、NATOなど国際機関からのハイレベルなスピーカー約30名が東京に集結し、この日本から世界に強いメッセージを打ち出します。
東京から世界へメッセージを発信
「東京会議 2024」のテーマは “協力”です。イスラエル・ガザ戦争で欧米のダブルスタンダードが明白になり世界から信頼を失う中、日本と民主主義国が連鎖した複合的な危機にどう協力するべきなのか。4つの非公開会議と公開フォーラムで議論を行います。最終的には10か国の共同メッセージを固め、世界へ発信します。
東京会議2024 公開フォーラム開催概要
日付:2024年3月14日(木)12:30-18:30
メインテーマ:多極化、分断化する世界で多国間主義による国際協調をどう回復させるか
通訳:日英同時通訳
参加費:無料
申込締切:2月29日(木)
定員:会場300名
※定員に達し次第締め切らせていただきます。
※対面での参加となります。
主催:言論NPO
お問い合わせ:言論NPO事務局 tokyo-registration@genron-npo.net
東京会議とは
世界経済の分断回避と平和秩序の修復、グローバル課題について対話・提案する国際会議
「東京会議」は、国際秩序が不安定化する中で、自由と民主主義、法の支配、ルールに基づく秩序の立ち位置から国際協調と多国間協力を促進するため、2017年に言論NPOが東京で立ち上げたハイレベルな国際会議です。知的論壇や世論形成に強い影響力を持つシンクタンクの代表者が東京に集まり、国際社会が直面するグローバルな課題について、東京から議論を発信し、会議内での主張や意見をG7議長国に提案してきました。
自由と民主主義、法の支配、多国間協力を立ち位置に、10カ国の民主主義国のシンクタンク代表者と共に東京から議論を発信
2020年からは、ヨーロッパやアジアより、首脳級の政治リーダーが参加し、世界の自由秩序と多国間主義、民主主義を守るため国内外に強いメッセージを発信してきました。過去7回の会議で、シンクタンクの代表者だけではなく、首脳・大臣級の有力者や各分野を代表する専門家が参加しており、その数は約20か国・100名以上となっています。
現在では、「東京会議」は、世界の知的コミュニティの国際会議のひとつとして位置付けられています。老舗国際会議・ミュンヘン安全保障会議をはじめ、ライシナ会議(インド、2016年~)やコペンハーゲン民主主義サミット(2018年~)、マクロン仏大統領のイニシアチブで設立された、パリ平和フォーラム(2018年~)などの新興の国際会議とも連携や協力関係を深めています。独立・民間のシンクタンクが各政府と組み、国際的競争を行う中、「東京会議」は、自由・民主主義、多国間主義、ルールベースの秩序を守り、アップデートさせることを目的に誕生した日本発の国際会議として、世界的にプレゼンスを高めています。
詳細パンフレットはこちらから!
2024.02.9
世界が複合的な危機に直面する中、民主主義国はどう力を合わせるのか
世界は今、経済の分断や常態化した気候変動の脅威、食糧危機や脱炭素の後退、途上国の債務危機に直面しています。世界は二つの戦争を止められないだけではなく、こうした危機をより加速させています。
しかも、イスラエル・ガザ戦争への対応で露呈した欧米のダブルスタンダードはグローバル・サウスとの溝を拡大し、今年11月にある米国の大統領選の結果に世界は身構え始めています。こうした複合化した危機を食い止めるために、日本や世界の民主主義国にどのような努力が問われているのか。
日本から世界に強いメッセージを発信
「東京会議 2024」では、国家首脳級の基調講演者に加え、世界を代表する10カ国のシンクタンクのトップ、そしてIMF、WTO、UNDP、AU(アフリカ連合)、NATOなど国際機関からのハイレベルなスピーカー約30名が東京に集結し、この日本から世界に強いメッセージを打ち出します。
世界の危機に最先端で取り組むこの議論の場に、是非ご参加ください。
開催概要
日付:2024年3月14日(木)12:30-18:30
メインテーマ:多極化、分断化する世界で多国間主義による国際協調をどう回復させるか
通訳:日英同時通訳
参加費:無料
申込締切:2月29日(木)
定員:会場300名
※定員に達し次第締め切らせていただきます。
※対面での参加となります。
主催:言論NPO
お問い合わせ:言論NPO事務局 tokyo-registration@genron-npo.net
2024.01.5
言論NPOは2024年3月13日から15日にかけて、「東京会議2024」を開催します。「東京会議」は、2017 年に言論NPOが東京で立ち上げた日本発のハイレベルな世界会議です。世界の知的論壇や世論形成に強い影響力を持つ世界を代表する10 のシンクタンクの代表が東京に集まり、国際社会がまさに今直面するグローバルな課題について、東京から議論を発信し、会議内での意見をまとめG7議長国に提案します。
今年のメインテーマは、「多極化、分断化する世界で多国間主義による国際協調をどう回復させるか(仮題)」。ウクライナ戦争の長期化とイスラエル・ガサ衝突は様々なグローバルリスクを拡大すると同時に、欧米の矛盾が露呈しています。グローバルサウスの国々との考えに溝が広がる中、いかに国際協調の立て直しを考えるか議論します。
「東京会議2024」は対面で開催し、300名限定で会場にてご参加いただけます。登壇するパネリストや参加方法の詳細は1月末にご案内予定です。ぜひ、ご参加ください。
「東京会議2024」開催概要
日時:2024年3月13日(水)、14日(木)、15日(金)
場所:東京プリンスホテル
2024.01.5
「東京-北京フォーラム」で政府間外交の環境をつくる
私は民間の対話には特別な使命があると考えています。両国関係が困難な時、共通の課題を抱えた時、両政府よりも一歩先に出てその課題に立ち向かい、政府間外交の環境づくりを行うことです。
19 回目を迎える今年の「東京-北京フォーラム」で、私たちが一歩先に出て取り組もうとしたのは二つのことです。
第一に、国際社会の平和に対する努力が厳しく問われる局面で、本当に日中両国が力を合わせて世界の平和のために取り組むことができるのか、ということです。全体テーマに「平和」を設定したのはそのためであり、私たちは平和に向けた努力を政府に先駆けて合意しようと考えたのです。
特に今年は日中平和友好条約の 45 周年であり、両国が世界の平和や繁栄に責任を持って取り組むことは、この節目の年に私たちに突き付けられた重大な課題だからです。
そして、第二に両国の外交と国民間の対話を正常化するということです。今年のフォーラムは4年ぶりに対面での開催となりましたが、反スパイ法の改正で訪中の安心が確保できないと少なくないパネリストが、北京に向かうことを断念しました。また、11 月の APECでは、日中の首脳会談は実現しましたが、まだこの時は政府間の対話は軌道に乗らず、それがどう転ぶか分からない状況でした。 私たちは、今回の議論で対話の環境づくりに本気で取り組もうと考えたのです。
両国間で「北京コンセンサス」に合意し閉幕
北京ではその前日まで中国政府の第三回「一帯一路」の国際会議が行われ、習近平国家主席とロシアのプーチン大統領との首脳会談も行われました。 私たちの対話は、その会議に挑むように、その翌日からまさに平和と核の問題をめぐって公開の議論を行ったのです。この議論には日中両国の約百名もの有識者、有力者が参加しました。追い風になったのは、岸田首相の会議前の晩餐会にあてた祝辞でした。岸田首相はその中で、この地域の平和と繁栄に責任を持つ中国との対話は極めて大事だとし、努力を呼びかけ たのです。
政治外交や、核の問題、経済など7つの分科会の議論はそう簡単なものではなく、激しい 議論もありました。しかし、私たちは真剣に現状の困難に向き合い、そして、協議は徹夜に なりましたが、平和とあらゆる対話の再開に向けた「北京コンセンサス」を合意したのです。
こうした民間の努力が、この地域と世界の平和を願う、多くの人の希望に少しでも貢献でできることを信じています。
言論 NPO 代表 工藤泰志